産経抄
ゴッホはひまわり、モネは睡蓮(すいれん)を愛した。「リンゴ一つでパリを驚かせたい」と言ったのは、セザンヌだった。秋の果実だけで約200点の絵を残し、後にパリの画壇どころか世界中の賛美を受けた「リンゴの画家」である。・・・(音読:加藤亜衣子)
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産経抄
まずは約束とルールを守る。そんな人間社会の原則を軽んじる相手と、胸襟を開いて話し合ったところで実りはあるまい。24日の安倍晋三首相と韓国のナンバー2、李洛淵(イ・ナギョン)首相との会談は案の定、平行線をたどった。「何もないよ」「全然中身はない」。会談後の政府高官の言葉である。・・・(音読:塚本美也子)
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産経抄
「日本の新聞は、極めて深刻な中国の民族問題の基本的知識に関して、あまりにも無神経である」。元東大史料編纂(へんさん)所教授の酒井信彦さんが、小紙で指摘していた。その例として挙げたのが、「ウイグル族」という表現である。・・・(音読:鈴木春花)
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産経抄
リオデジャネイロ・パラリンピックの終了直後に安楽死する。ある欧州メディアの報道により、ベルギーの車いす陸上の女子選手、マリーケ・フェルフールトさんは急遽(きゅうきょ)、記者会見を開かなければならなくなった。・・・(音読:加藤亜衣子)
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産経抄
天皇陛下が長年、「水」の問題に取り組んでこられたことはよく知られている。実は「道」への興味が出発点だった。英国留学の思い出をつづった『テムズとともに』のなかで明かされている。・・・(音読:峰田雅葉)
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デパートの買い物客は一斉に安堵(あんど)のため息をついたそうだ。昭和35(1960)年2月23日午後5時、「男子ご安産」のニュースが拡声器から流れた瞬間である。さまざまな感慨が込められていたはずだ。まもなく街はお祝いムード一色となった。・・・(音読:塚本美也子)
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「オランダは小さな国に不相応なほどに多くの絵画の巨匠たちを出した」。司馬遼太郎さんの『オランダ紀行』の一節である。司馬さんは、その一人であるフィンセント・ファン・ゴッホについて、多くのページを費やした・・・(音読:加藤亜衣子)
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難事件の解決に腕を振るった名探偵シャーロック・ホームズは、五輪にも控えめな足跡を残している。・・・(音読:鈴木春花)
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至極もっともな話でも、この人が口に出すと抵抗を覚える。「益々(ますます)災害は大型化してきます。老朽化した橋梁(きょうりょう)、道路、河川の堤防などの総点検を東京五輪などより最優先すべきです」。甚大な被害をもたらした台風19号を受け、鳩山由紀夫元首相が15日に自身のツイッターに記した言葉である。・・・(音読:加藤亜衣子)
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産経抄
日本国憲法が禁じている「検閲」が、最近注目されている。14日に閉幕した「あいちトリエンナーレ2019」の企画展、『表現の不自由展・その後』のおかげだ。・・・(音読:塚本美也子)
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韓国の盧武鉉(ノ・ムヒョン)元大統領の自殺は、衝撃的なニュースだった。2009年5月、自宅近くの山の岩場から飛び降りた。盧氏は当時、親族による不正資金疑惑の渦中にいた。検察は、業者から盧氏の妻らに渡った6億円余りを「包括的ワイロ」として捜査していた。・・・(音読:峰田雅葉)
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『奥の細道』に旅立つ前年の貞享5(1688)年8月、芭蕉は木曽路から信州に入った。月末に江戸に帰るまでの旅行記が『更科紀行』である。芭蕉はなぜか目にしているはずの千曲川の句をつくっていない。・・・(音読:鈴木春花)
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多くの死傷者、行方不明者が出ている。千曲川や多摩川など各地の河川が氾濫した。土砂崩れや鉄路、道路が寸断された地域もある。過去最強級の台風19号に備えはしたが大きな被害が出た。引き続き救助、復旧活動に全力をあげ一人でも多くの命を守ることに万全を期したい。・・・(音読:加藤亜衣子)
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政府が発行する貨幣は6種類ある。そのうちの1つはお目見えして以来、意匠と素材が変わっていない。公募されたデザインは、表と裏で別の人による作品が選ばれた。表側に刻まれた「若木」は伸びゆく日本の象徴だという。お分かりだろうか。・・・(音読:塚本美也子)
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「常に政治は一寸先は闇であり光だ」。国民民主党の玉木雄一郎代表は10日の記者会見で語った。玉木氏を目にかけている亀井静香元金融担当相が9日のBS-TBS番組で、今年夏頃に同党と自民党の大連立構想が持ち上がっていたと明かしたことを、記者に問われてのことである。・・・(音読:峰田雅葉)
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今年のノーベル化学賞の受賞が決まった吉野彰さん(71)は昭和60年ごろ、さかんに「三種の鈍器」という言葉を口にしていた。「三種の神器」をもじった造語である。当時、大手化学メーカーの旭化成に入社して10年あまり、新型電池の開発に取り組んでいた。・・・(音読:塚本美也子)
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「虎丸」という勇ましい名前をつけたのは、祖母だという。やはり囲碁棋士の兄、芝野龍之介二段の「龍」の字と対になっている。もっとも、史上最年少で七大タイトルを獲得した19歳の新名人は一見、虎のイメージとはほど遠い。・・・(音読:鈴木春花)
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ノンフィクション作家の足立倫行(のりゆき)さんは、常々不思議に思っていた。日本各地を旅していると、いたるところで「名物イカ焼き」の看板を見かける。なぜ日本人はこれほどイカを「偏愛」するのか。・・・(音読:加藤亜衣子)
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86年の生涯を終えた大投手、金田正一さんは若い頃、黒澤明監督を「オヤジさん」と呼んで親しく付き合った。黒澤さんは、金田さんの豪放磊落(らいらく)ぶりを「化けもの」と表現してかわいがった。・・・(音読:塚本美也子)
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公立小学校の教員の志望者が減り続けている。教員免許を取得しながら、民間企業に就職する学生が後を絶たない。学校現場の長時間労働が敬遠されているらしい。・・・(音読:鈴木春花)
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町には風邪除(よ)けの札が配られた。札といっても薄紙1枚に過ぎない。風の袋を担いだ鬼が不動明王の眼光に縮み上がり、ほうほうの体で逃げ出す絵が刷られていただけだった-とは、宮尾登美子の代表作『櫂(かい)』の一節である。・・・(音読:峰田雅葉)
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人にはそれぞれ、心の琴線に触れる言葉があるのだろう。安倍晋三首相は4日の所信表明演説で、多様性を認め合い、老若男女の誰もが個性を生かすことができる社会を目指すキーワードとして、山口県仙崎村(現長門市)出身の詩人、金子みすゞの詩『私と小鳥と鈴と』の一部を引いた。・・・(音読:加藤亜衣子)
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主人公は、香港警察の名刑事である。その命が尽きようとする、2013年の場面で始まる。香港のミステリー作家、陳浩基(ちん・こうき)さんの『13・67』(文芸春秋)は2年前日本でも刊行され、大ヒットした。13とは2013年、67は主人公が新米刑事だった1967年を表す。・・・(音読:塚本美也子)
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第二次大戦中の1941年末にバルト海に臨むナチス・ドイツの秘密研究所で「V2」の実験が始まった。歴史上初めての弾道ミサイルが完成したのは、翌年10月である。・・・(音読:鈴木春花)
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直木賞作家で実業家でもあった故邱永漢(きゅう・えいかん)さんは70年前、香港で暮らしていた。生まれ故郷の台湾で独立運動に関わり、国民党政府ににらまれて亡命していた。やがて大陸は共産党の天下となり、香港は逃げ出してきた難民であふれかえるようになる。・・・(音読:塚本美也子)
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贈り物をきっぱり断るのは難しい。福島県知事の逮捕にまで発展した昭和51年の県政汚職事件の記録『ドキュメント自治体汚職』(吉田慎一著)に、こんな場面があった。・・・(音読:峰田雅葉)
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寒風吹きすさぶ秩父宮ラグビー場で一杯やったホットウイスキーこそ、ラグビーの味だと思い込んでいたが、違った。「ワールドカップ史上、最大の番狂わせ」と英BBCに言わしめたアイルランド戦では、日本全国で何千万杯のビールが注がれ、何千万回の万歳がこだましたことだろう。・・・(音読:加藤亜衣子)
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将棋の米長邦雄永世棋聖には、名人戦に6度挑んで6度敗れた過去がある。7度目の挑戦に際し、二回り下の羽生善治氏らに頭を下げて教えを請うた。最新の戦術を手に、悲願をかなえたのは平成5年5月だった。・・・(音読:鈴木春花)
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読書週間(10月27日~11月9日)にはまだ一月早いが、ようやく残暑も和らいで読書向きの季節が到来した。活字中毒の小欄は、手元に常に1、2冊の本がないと落ち着かないが、そうそういつも読みたい本と出会えはしない。そこで、お気に入りの時代小説を繰り返しひもとくことになる。・・・(音読:峰田雅葉)
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お腹(なか)の大きい若い女性と元夫が、法廷で裁判官と向きあっている。養育費の支払いを求める女性に、元夫は「金もない、職もない」とうそぶく。「外に止まっているのは、きみの車だね」。裁判官は元夫からキーを取り上げ、女性に渡した。米映画『ジャッジ 裁かれる判事』の一場面である。・・・(音読:塚本美也子)
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「先生、気層のなかに炭酸ガスがふえて来れば暖かくなるのですか。」「それはなるだろう。地球ができてからいままでの気温は、たいてい空気中の炭酸ガスの量できまっていたと言われるくらいだからね。」。・・・(音読:加藤亜衣子)
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昭和の昔、海外旅行がまだまだ高嶺(たかね)の花だったころ。わざわざ東京・神保町の大きな書店まで出かけてトーマス・クックの時刻表を手に入れ、まだ見ぬ欧州を疾走する特急列車に乗った気分になった鉄道愛好家も少なくなかった。・・・(音読:鈴木春花)
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20日のワールドカップ(W杯)の開幕戦、日本の快勝を中継で確かめた後、同じチャンネルでラグビー映画の名作を見た。クリント・イーストウッド監督の『インビクタス 負けざる者たち』である。南アフリカで1995年に開催されたW杯が舞台となる。・・・(音読:塚本美也子)
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秋のお彼岸、社会面にお引っ越しした「ひなちゃん」一家もお墓参りをしていた。「ごせんぞさまはみえないけど、いるんですよね!」と聞く、ひなちゃんはやっぱりいいな!!と癒やされたが、先週不可解な判決があった。・・・(音読:峰田雅葉)
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「血液型を調べる必要がある」と医師に言われ、おじさんは右の腕を差し出した。「型が違う」と首を振る医師に、「僕の血が違うたあ何だ」とおじさんは納得がいかない。「もう一度、左からとってみてくれ」。・・・(音読:加藤亜衣子)
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「寄り添うだけでは被災地は救えない」。東電福島第1原発で、増え続ける汚染浄化後の処理水をめぐる原田義昭前環境相の忌憚(きたん)のない言葉は、ずばり本質を射ている。退任直前には「(処理水を海洋に)放出して希釈する他に選択肢はない」と述べて反発を買ったが、覚悟の上での発言だった。・・・(音読:塚本美也子)
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いよいよ、ラグビーのワールドカップ(W杯)日本大会が開幕する。観戦の助けにと、刊行されたばかりの『ラグビーの世界史』(白水社)をひもといた。19世紀の初め頃、イングランドのパブリックスクール「ラグビー校」で誕生した。やがて、世界に広がる大英帝国の植民地に伝播(でんぱ)していく。・・・(音読:加藤亜衣子)
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ソロモン諸島は、日本からはるか6000キロも離れた南太平洋の島嶼(とうしょ)国である。南部のガダルカナル島にある、首都ホニアラの国際空港が玄関口となる。もともと日本軍が昭和17年7月に上陸して建設した飛行場だった。・・・(音読:鈴木春花)
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「ドローン」(無人機)とは、英語で雄バチを意味する。飛行の際のブーンという音に由来する。空撮や荷物の配達、農薬の散布など、世界中で実用化が進んでいる。とはいえ、もともと軍事目的で開発された技術だ。・・・(音読:峰田雅葉)
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昭和43年9月18日、熾烈(しれつ)な優勝争いを繰り広げていた巨人と阪神の一戦で、「事件」は起こった。阪神のエース、ジーン・バッキー投手の厳しい内角球に対して、王貞治選手はマウンドに歩み寄って抗議した。・・・(音読:塚本美也子)
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日本で初めてのマラソン大会は、神戸-大阪間で開催された。明治42(1909)年に大阪毎日新聞(毎日新聞の前身)が主催した「マラソン大競走」である。きっかけは、大阪毎日の関係者が観戦した前年のロンドン五輪のマラソンだった。小柄な日本人向きの競技だと気づき、選手の育成を思い立った・・・(音読:加藤亜衣子)
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中空(なかぞら)の月が風情を帯びる季節は、長雨や台風と重なることが多い。作家で俳人の久保田万太郎は〈月哀(かな)しわれから雲をくぐるとき〉と詠んだ。いわゆる中秋無月に嘆息した句として、お天気博士の倉嶋厚さんが『季節よもやま辞典』で触れている。・・・(音読:鈴木春花)
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任期制自衛官も失業保険に入れない。公務員宿舎削減で緊急参集要員住宅が確保できない。頻繁に異動があるのに引っ越し費用は半額自己負担-。ジャーナリスト、小笠原理恵氏の新著『自衛隊員は基地のトイレットペーパーを「自腹」で買う』を読むと、今さらながらに自衛隊の隠忍に頭が下がる。・・・(音読:塚本美也子)
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ニューヨークは何度も停電に悩まされてきた。今年7月にも変電所の火災が原因となり、エレベーターに閉じ込められる人が続出した。ブロードウェーの公演も中止になり、ミュージカルの出演者は路上に舞台を移して聴衆を楽しませていた。・・・(音読:峰田雅葉)
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安倍晋三首相が今年8月に抜くまで、戦後最長の政権を維持したのは、首相の大叔父にあたる佐藤栄作元首相である。内閣改造を6回行った佐藤は、「議員名鑑」を常に手元に置いていたといわれ、「人事の佐藤」とたたえられた。・・・(音読:加藤亜衣子)
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日産自動車の西川(さいかわ)広人社長の突然の辞任表明は、フランスでも大きく報じられた。日産と連合を組むルノーの本社があるだけに、当然である。フィガロ紙は、「ブルータスが辞任した」などと報じたそうだ。・・・(音読:鈴木春花)
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産経抄
刑務所暮らしのつらさの一つは、読み物がないことだという。3度の服役経験のある安部譲二さんは、どこの刑務所でも木工場で働いていた。棚には、インテリアの専門誌『室内』のバックナンバーが並んでいた。・・・(音読:塚本美也子)
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歌人の俵万智さんに、わが子の命名を詠んだ一首がある。〈とりかえしつかないことの第一歩 名付ければその名になるおまえ〉。三十一文字の向こうに、命名の筆を持つ親の震えを見るようで、鼻がつんとなる。・・・(音読:峰田雅葉)
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産経抄
安倍晋三首相が11日に行う内閣改造と自民党役員人事をめぐり、政界の楽屋雀(すずめ)は誰がどのポストを射止めるかだの狙いはどうだのとかまびすしい。自身の栄達や利害に直結するだけに、与党議員の話題はほとんどそれ一色である。その陰に隠れているが、ふとあれはどうしたのかと気になった。・・・(音読:塚本美也子)
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早くから55歳で「隠居」すると決めていた。兵庫県姫路市出身のドイツ文学者の池内紀(おさむ)さんは、小学4年で父を亡くした。高校1年の時、大学を出たばかりの兄が、勤務先で事故死する。生活が苦しい中、池内さんと弟の宇宙物理学者の了(さとる)さんを大学に送りだしてくれた母も50代で亡くなっている。・・・(音読:鈴木春花)
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