産経抄
歌人の小池光さんに風変わりな一首がある。〈信長が斃(たほ)れし齢(とし)にわれなりて住宅ローン残千八百万〉(歌集『静物』所収)。天下統一の夢に破れて果てた人、夢のマイホームを手に入れながら月々の返済にあえぐ人、その対照に微苦笑を誘われる。・・・(音読:加藤亜衣子)
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「こんなにやつきになつて罵詈(ばり)雑言を浴びせかけなくてもよささうなもの」。劇作家で評論家の福田恆存さんは昭和30年に発表した論文『輿論(よろん)を強ひる新聞』で、当時の新聞による吉田茂首相糾弾をいぶかっている。「どの新聞もどの新聞も、まるで相談したやうに反吉田になつてゐる」。・・・(音読:峰田雅葉)
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ベートーベンの「交響曲第9番」が、ウィーンで初演されたのは、1824年の5月だった。すでにほとんど耳が聞こえなかったベートーベンは、聴衆の拍手に気づかず、作品の出来栄えを確認することもかなわなかった。・・・(音読:塚本美也子)
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内閣府が今年1月に公表した世論調査の結果にはショックを受けた。運転免許証を保有する70歳以上の高齢者が、家族や医師から運転をやめるように勧められたらどうするか。免許証を返納しようと考える人は、26・3%にすぎなかった。・・・(音読:鈴木春花)
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昨日訃報が届いた作家の津本陽さんには、13年間のサラリーマン経験がある。戦後まもなくの食料増産が急務の時代とあって、勤めていた肥料メーカーの業績はよかった。給料日本一とも報じられた。・・・(音読:峰田雅葉)
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昨年2月に夫の三浦朱門さん(91)を見送って、約4カ月後の話である。書類戸棚を整理していると、中から一万円札が12枚も見つかった。・・・(音読:塚本美也子)
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トランプ米大統領は、北朝鮮との核をめぐるやりとりを「難しいポーカー」と表現したことがある。オバマ前大統領は、ポーカーの名手として知られたが、核外交のゲームでは自分の方が一枚上との思いが強いのかもしれない。・・・(音読:加藤亜衣子)
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古典『平家物語』に〈瀬まくら大きに瀧(たき)鳴ってさかまく水もはやかりけり〉とある。「宇治川の戦い」の一節である。以前、小学6年生の国語教科書に口語訳が載った。〈浅せにくだけるひびきはたきのよう。さかまく水は、矢のように流れ下る〉。・・・(音読:鈴木春花)
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「北朝鮮が未練たらたらなコメントを出し始めているね」。政府高官は25日、こうつぶやいた。トランプ米大統領が24日、来月12日にシンガポールで開催予定だった米朝首脳会談の中止を表明した途端、それまで強気で会談中止をちらつかせていた北が、手のひらを返して対話を請うている。・・・(音読:塚本美也子)
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陸軍大将、今村均(ひとし)の生涯を描いた角田房子さんの『責任』に、こんな場面がある。ラバウルで敗戦を迎え、戦犯となった今村と部下の参謀長は口論を始めた。「責任は当然私が負うべきだ」「いや、命令した私の責任だ」。・・・(音読:加藤亜衣子)
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1972年9月、日中国交正常化のために訪中していた田中角栄首相の一行はある夜、毛沢東主席の私邸に招かれた。「(周恩来首相との)ケンカは済みましたか」。日中首脳会談をケンカにたとえる言葉で始まった会見は、なごやかに進んだ。・・・(音読:峰田雅葉)
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若き日に良き師に出会えるかどうかで、人生は大きく変わる。幕末に勤王の志士として活躍した山田市之允(いちのじょう)は、その意味で幸せだった。わずか1年間ながら、松下村塾で吉田松陰の薫陶を受けられたからだ。・・・(音読:加藤亜衣子)
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神奈川県茅ケ崎市にある「茅ケ崎館」は、明治32年創業の日本旅館である。日本映画の巨匠、小津安二郎監督の仕事場として有名だった。「東京物語」や「早春」など名作のシナリオは、ここで生まれた。・・・(音読:鈴木春花)
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美人画で知られた日本画家、伊東深水(しんすい)は、一人娘を溺愛した。幼い頃は文字通り、箸より重いものは持たせなかった。アルマーニの制服騒動で話題になった東京・銀座の泰明小学校には、人力車で通わせていた。・・・(音読:塚本美也子)
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一説によると「人間は赤い頬をした動物」に分類されるらしい。「しばしば羞恥を感じなければならなかったから」が理由とか。歩みを止めて、省みては自分を恥じる。人が人たるゆえんだと、ニーチェは説いた。・・・(音読:峰田雅葉)
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「私の知る限り歴代自民党総理で安倍総理が最悪です」。菅直人元首相(立憲民主党最高顧問)が14日付の自身のブログで安倍晋三首相について、こうこきおろしたことが、インターネット上で話題を呼んでいる。当たり前だが、「あなたがそれを言うのか」という反応が目立つ。・・・(音読:塚本美也子)
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コーポレートアイデンティティー(CI)という言葉が、流行したことがある。企業文化のイメージを確立して、わかりやすく発信する戦略である。その火付け役となったのは、昭和60(1985)年に発足したNTTだった。・・・(音読:加藤亜衣子)
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ある日突然、人が姿を消す。昔の日本人はこの一大事を「神隠し」と呼び、天狗(てんぐ)の仕業だと考えた。民俗学者の柳田国男が昭和24年、江戸時代に天狗にさらわれた作之丞という名の農夫の話を書いている。・・・(音読:峰田雅葉)
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故篠竹幹夫さんといえば、日本大学アメリカンフットボール部を17度も学生チャンピオンに導いた名将である。下戸だった篠竹さんの合宿所の部屋には、ウイスキーのボトルが並んでいた。「酒好きのヨネヤンが来るのを待っていたんだ」。関西学院大の当時の米田満監督が訪れるたびに、ボトルを開けた。ライバルの両大学は、友情でも結ばれていた。・・・(音読:鈴木春花)
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予備校受験のために上京した浪人生の孝史は、宿泊中のホテルで火事に遭う。謎めいた男に助けられ、気がついたら、雪が降り積もる昭和11(1936)年の東京にいた。・・・(音読:塚本美也子)
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ある日突然、人が姿を消す。昔の日本人はこの一大事を「神隠し」と呼び、天狗(てんぐ)の仕業だと考えた。民俗学者の柳田国男が昭和24年、江戸時代に天狗にさらわれた作之丞という名の農夫の話を書いている。・・・(音読:峰田雅葉)
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誰の手も借りることなく2本の足で立った人はいない。「だけど…大きくなると、この体の中に、母の乳がながれて赤くなっていることは忘れてしまっていますからね」。吉川英治の小説にあったセリフを思い出す。・・・(音読:加藤亜衣子)
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新聞の1面トップ記事は、編集者がその日一番のニュースだと判断したものを充てる。在京各紙の11日付朝刊は、史上初の米朝首脳会談が6月12日にシンガポールで開催と決まったことを報じる記事がトップを飾ったが、東京新聞だけは独自性を発揮していた。柳瀬唯夫元首相秘書官の国会参考人招致を取り上げたのである。・・・(音読:鈴木春花)
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新天地で第二の人生を謳歌(おうか)するシニア世代の姿を描いた『人生の楽園』(テレビ朝日系列)という人気番組がある。マレーシアで長く首相の座にあったマハティール氏も、そんな余生を夢見た日があったのか。・・・(音読:塚本美也子)
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北朝鮮の核・ミサイル問題をめぐり、「リビア方式」がキーワードとなっている。「アラブの狂犬」と恐れられたリビアの最高指導者、カダフィ大佐は2003年、核兵器開発含め大量破壊兵器の放棄を表明した。・・・(音読:加藤亜衣子)
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長く二足のわらじをはいていた。総合化学メーカー、昭和電工の技術者として残業は当たり前、朝は誰よりも早く出社した。週に2、3回は飲み屋で部下の愚痴も聞いた。・・・(音読:峰田雅葉)
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東京・駒場の屋敷は、英国風の洋館だった。4万3千平方メートルの敷地には、ゴルフや野球ができる芝生のほか、テニスコートのある洋式庭園や日本庭園も造られた。馬場には4頭の馬がいた。・・・(音読:鈴木春花)
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今年は雲の育ちが例年より早いように映る。盛夏の季語である「雲の峰」とまではいかないものの、上へとかさを増す積み雲が、空に夏さながらの奥行きを与えている。沿道の植え込みに咲いたツツジは見頃もつかの間、時ならぬ炎暑に色あせ、しなびた花を路傍に散らしていた。・・・(音読:塚本美也子)
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毎年5月3日の憲法記念日には、げんなりする光景が目に飛び込んでくる。今年は東京都内で開かれた護憲派集会で、作家の落合恵子さんが、安倍晋三首相とその内閣について訴えていた。「戦争大好き内閣と呼ぶしかありません」「独裁者は自らの欲望のために最後は破滅する」。・・・(音読:峰田雅葉)
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はて、月に水があったのか、と首をかしげる小欄は、よほどの科学オンチである。北極と南極の表面に存在することは、人工衛星による観測ですでに知られていたようだ。・・・(音読:塚本美也子)
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コミックバンドの先駆け「クレージーキャッツ」のリーダー、ハナ肇さんが亡くなったのは、平成5年9月である。僧侶でもある植木等さんは、すぐに盟友の枕元に駆けつけ読経した。やがて報道陣の前で宣言する。「支離滅裂という言葉がありますが、支えが離れたわけで、きょうで解散です」。・・・(音読:加藤亜衣子)
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世の中のあらゆる出来事を賭けの対象にする英ブックメーカーが、10月に発表される今年のノーベル平和賞の受賞者を予想している。なんと南北首脳会談を行ったばかりの韓国の文在寅大統領と北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長が、先週末の時点で1番人気になっていた。・・・(音読:峰田雅葉)
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シベリアで3年間の抑留生活を送った。帰国後、松山市内で映画館を開いて成功したのが始まりだった。やがて来島どっくや佐世保重工業など、造船会社の再建を相次いで引き受け、「四国の大将」と呼ばれたカリスマ経営者が、故坪内寿夫氏である。・・・(音読:鈴木春花)
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「文楽の歴史上、甲子園の土を踏んだんは、わしだけや」。先週末、93歳で亡くなった人形浄瑠璃文楽の竹本住太夫(すみたゆう)さんの自慢である。・・・(音読:塚本美也子)
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英語の「EVIL=悪」を逆さまにすると「LIVE=生きる」になる。ある物語に出てきた「EVIL-LIVE」のシンプルな回文に、英文学者の柳瀬尚紀さんが奥深い訳を残している。「EVIL」は「咎(とが)」、「LIVE」は「各人」と(『日本語は天才である』新潮社)。・・・(音読:鈴木春花)
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政府が17日に閣議決定した答弁書は、昭和34年7月11日付外務省記事資料を引用していた。資料は「在日朝鮮人の渡来および引揚げに関する経緯、とくに、戦時中の徴用労務者について」で、朝日新聞が「大半、自由意思で居住 外務省、在日朝鮮人で発表」と報じていたものである。・・・(音読:加藤亜衣子)
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「北朝鮮がアメリカに『ごろつき国家』と呼ばれる、おどしとゆすりで生きる国になったのはいつからだろうか」。長年、北朝鮮の人権問題を追い続けたジャーナリストの萩原遼さんは、ソウル五輪の開催された1988年が転換点となった、と見る。・・・(音読:塚本美也子)
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「与」という漢字は、「あたえる」のほかに、「くみする」との訓読みもある。「仕事に参加する」とか「ともに行動する」という意味を表す。漢字学者の阿辻哲次さんによると、「与」の旧字体の成り立ちを知れば理由がわかる。「與」は、「《与》という形に描かれているものを真ん中に載せた輿(こし)を四方から手でかつぎあげている」。つまり、ものを運ぶ際に何人かが協力する形を表す。・・・(音読:峰田雅葉)
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広島カープの衣笠祥雄選手のニックネーム「鉄人」は、漫画「鉄人28号」に由来する。当初は背番号28をつけていた。もちろん、2215という偉大な連続試合出場記録を打ち立てられたのは、体が人一倍頑丈だったからだ。・・・(音読:塚本美也子)
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作家の故米原万里さんは少女時代、東欧チェコスロバキアの国際色豊かなソビエト学校に通っていた。林間学校で、子供たちがそれぞれ自国のおとぎ話を披露することになった。・・・(音読:鈴木春花)
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陸に引き上げられるヨットのスクリューにロープがからみついていた。その先から遺体が姿を現す。フランスの俳優、アラン・ドロンを一躍スターの座に押し上げた、映画「太陽がいっぱい」のラストシーンである。完全犯罪のもくろみが崩れ去る瞬間だった。・・・(音読:加藤亜衣子)
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宴(うたげ)の締めくくりを「終わり」と言わず「お開き」と言う。弔事では「返す返すも」などの重ね言葉が疎まれる。「するめ」を「当たりめ」と呼ぶのは、「(金銭を)する」の響きを嫌った博徒の験担ぎに由来する。・・・(音読:峰田雅葉)
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米誌タイムが毎年発表している「世界で最も影響力のある100人」に、今年は日本から安倍晋三首相とソフトバンクグループの孫正義会長兼社長が選ばれた。選評で豪州のターンブル首相は、安倍首相について「強いリーダーで、粘り強く勇気がある」「他者の意見に耳を傾ける柔軟性も持つ」とコメントしている。・・・(音読:塚本美也子)
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防衛大学校は当初、保安大学校として昭和27年に開校した。当時の吉田茂首相に招聘(しょうへい)され、初代校長を務めたのが槇智雄(ともお)氏である。オックスフォード大学への留学経験もある政治学者の槇氏は、自由と規律を重んじ、学生に「紳士たれ」と説いた。・・・(音読:加藤亜衣子)
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ビートたけしさんの母、さきさんは、大変な教育ママだった。小学6年になった年の誕生日、たけしさんへのプレゼントは、10冊の参考書である。ちょっとでも勉強の手を抜くと、ぶん殴られた(『菊次郎とさき』)。・・・(音読:鈴木春花)
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音声を録音されていたと後に知って、地団駄(じだんだ)を踏んだに違いない。といっても、現在セクハラ発言疑惑の渦中にいる、財務省の福田淳一事務次官について書こうというのではない。・・・(音読:峰田雅葉)
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先週のコラムで取り上げた元大蔵省(現財務省)次官、故長岡実さんの少年時代の思い出である。渋谷駅近くの小学校に通っていた長岡さんは、主人を亡くしてからも駅に向かう忠犬ハチ公と毎日顔を合わせていた。・・・(音読:加藤亜衣子)
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現在の東京都中央区にあった病院で起こった事件である。医療用アルコールの減り方が早すぎる。誰かが飲んだに違いない。明治7年に英国から来日して外科医を務めていたヘンリー・フォールズが、すぐに犯人を突き止めた。・・・(音読:鈴木春花)
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春の風が、そよと吹くとはかぎらない。気象用語の本をめくると、風向きの急変に備えを促す言葉がこの季節に多い。「鉄砲西」や「西風(にし)落とし」は前線の通過後に吹く強い西風を指す。侮るな、との戒めである。・・・(音読:塚本美也子)
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希望の党という存在自体が、悪い冗談か嘘八百だったのか。同党と民進党が再結集し、5月上旬の新党結成を目指すという。昨年10月の衆院選で、希望の党は967万7524票の比例票を獲得している。理念や政策を信じて投票した多くの有権者は、詐欺に遭ったようなものである。・・・(音読:峰田雅葉)
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