産経抄
東京都大田区の1DKのマンションの一室は、出口がソファでふさがれ密室状態だった。3歳の梯稀華(かけはし・のあ)ちゃんは、脱水症状と飢えによって死亡したとみられる。意識が薄れるなかで、脳裏に浮かんだのはどんな光景だったろう。・・・(音読:鈴木春花)
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音楽をかけて軽口をたたきながら手術を行う。主人公のジャックは、陽気なエリート外科医だが、患者の気持ちに寄り添うタイプではない。ある日、声帯のがんを宣告され、自分の病院で治療を受けることになる。・・・(音読:峰田雅葉)
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利根川の堤防の法面(のりめん)には、春になると黄色い菜の花が見事に咲き誇る。実は治水という面からいえば、大変な厄介者だという。・・・(音読:塚本美也子)
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小池百合子東京都知事(67)の名前が世間に知られるようになるのは、24歳の時である。エジプト大統領夫人の来日が決まり、そのエスコート役に決まったのだ。日本人女性として、初めてカイロ大卒業を果たした、との触れ込みだった。・・・(音読:加藤亜衣子)
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肥後熊本藩の初代藩主、加藤清正といえば、朝鮮半島でのトラ退治で知られ、勇猛果敢な武将のイメージが強い。もっとも、肥後に入国してからは、熊本城の築城のほか、領内各地の河川改修や新田開発に情熱を傾けた。現在も熊本の人たちに、「清正公(せいしょこ)さん」と敬愛される所以(ゆえん)である。・・・(音読:鈴木春花)
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日清戦争に敗れた中国清朝は、下関条約の中で日本への台湾割譲を約した。その際、交渉の全権を担った李鴻章がこう言い捨てたとされる。「台湾は、鳥語らず、花香らず…瘴癘(しょうれい)(疫病)の地。割くも可なりだ」。・・・(音読:峰田雅葉)
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民主主義国と、そうでない国との二極化が進行している。「世界がばらばらになっている間隙(かんげき)を縫って、中国が影響力を拡大している」。外務省幹部が語るように、新型コロナウイルス感染症の発生源である中国は、コロナ禍による各国の混乱に乗じて覇権を握る狙いなのか。・・・(音読:鈴木春花)
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「ヤー・チャイカ」。ラジオを通じて世界中に流れた。声の主は、世界初の女性宇宙飛行士、ワレンチナ・テレシコワさんである。ソ連の宇宙船、ボストーク6号は、1963年6月16日に打ち上げられた。・・・(音読:塚本美也子)
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養子先の家業を大いに盛り上げ、49歳で隠居して江戸に出た。伊能忠敬(ただたか)が第二の人生で挑んだのは、日本地図の作製である。55歳から17年にわたって全国を測量行脚して、約440種類のいわゆる伊能図を残した。縮尺によって、大図、中図、小図に分けられる。・・・(音読:加藤亜衣子)
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英国統治時代の香港総督は代々外交官出身者が任命されてきた。ところが中国への返還を5年後に控えた1992年、英国はまったく違うタイプの人物を「最後の総督」に選んだ。・・・(音読:峰田雅葉)
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作家の向田邦子さんが「勝負服」と題したエッセーを書いている。勝負服とは、競馬の騎手がレースで着用するものだ。締め切りが迫ると猛烈なスピードで原稿をこなす向田さんは、自らを騎手になぞらえていた。・・・(音読:鈴木春花)
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季節柄仕方ないとはいえ、鬱陶しい日々が続く。ことに今年は、いつもの曇り空が、より灰色にみえる。こういうときこそテレワークの出番である。と、書きたいところだが、家に閉じこもっていては一行も書けないのが、昭和入社組の辛(つら)いところ。・・・(音読:塚本美也子)
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トイレットペーパーのロールを手で押して、形を三角に変えてみる。3分の1回転する度、手にはロールから心地よい振動が伝わってくる。元の形と比べて、紙の使用量は三角形の方が約3割も少なかったという。・・・(音読:加藤亜衣子)
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マスコミがしばしば使う言い回しに、「~となりそうだ」「~が予想される」の類いがある。事態の推移に関する見通しを示すものだが、自戒を込めていえば臆測や願望にすぎない場合も多い。6日付小欄で取り上げた麻生太郎財務相の発言に対する報道も、その一つだったのではないか。・・・(音読:塚本美也子)
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「こんにちは」。22歳で中国から来日した時、聞き取れた唯一の日本語だった。それから21年後の平成20年、楊逸(ヤン・イー)さんは芥川賞を受賞する。中国人として、いや日本語を母語としない作家で初めての受賞とあって大きな話題となった。・・・(音読:峰田雅葉)
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何でも望みをかなえよう。神様が申し出たらどうするか。トランプ米大統領だったら、迷うことなく秋の大統領選での再選を願うだろう。ギリシャ神話のミダス王は、欲にかられてとんでもない褒美を所望した。手の触れるものがすべて黄金に変わってしまう魔法である。喜びもつかの間、食べ物まで黄金になって、空腹に音を上げる。・・・(音読:塚本美也子)
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巻き寿司やバッテラ、マグロの握り…。大皿に盛られた寿司のカラー写真は、いかにも食欲を誘われる。「諸君は孤立され最早(もはや)援護補給の道はない。食料は大方なくなり、日々に餓死の運命に合ふのみである…」。裏面では、日本軍に降伏を呼び掛けていた。・・・(音読:鈴木春花)
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書店の参考書コーナーをのぞくと、旺文社の大学受験雑誌「蛍雪時代」が並んでいた。7月号の特集は「合格する人 落ちる人の特徴」というストレートな見出しが目を引き、思わず購入してしまった。・・・(音読:峰田雅葉)
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復員した健太郎は、投手としてプロ入りを目指している。入団テストの登板日に、鳴り物を持ち込み応援してもいいか。そう願い出る友人たちを、健太郎はやんわりと制した。「球場は静かな方がいいんです」。井上ひさしさんの舞台『闇に咲く花』である。・・・(音読:塚本美也子)
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公選法違反(買収)容疑で前法相夫妻が東京地検特捜部に逮捕されたことで、またぞろ安倍晋三首相の任命責任を問う声が出ているが、抄子はこの宮内庁による人選の方が解せない。兵庫県立大の五百旗頭(いおきべ)真理事長が、天皇陛下の相談役である宮内庁参与に就いた件である。・・・(音読:加藤亜衣子)
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昭和の名棋士、藤沢秀行さんといえば、酒、ギャンブル、女性関係なんでもござれの豪快な生き方で知られた。囲碁を通じて政界にも交友関係を広げていた。なかでも親しかったのが、ロッキード事件で田中角栄元首相の逮捕を許可した稲葉修元法相だった。・・・(音読:鈴木春花)
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北朝鮮のいら立ちは一体どこへ向かうのだろう。開城(ケソン)にある南北共同連絡事務所を爆破して、韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領による宥和(ゆうわ)政策を踏みにじった。経済協力の象徴だった開城工業団地と金剛山(クムガンサン)観光地に軍を展開する、とも表明している。・・・(音読:峰田雅葉)
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米南部の主要都市アトランタは、かつて南北戦争の激戦地となった。マーガレット・ミッチェルによる世界的ベストセラー『風と共に去りぬ』の舞台としても知られる。1939年に公開されたビビアン・リー主演の映画も大ヒットした。・・・(音読:塚本美也子)
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米南部の主要都市アトランタは、かつて南北戦争の激戦地となった。マーガレット・ミッチェルによる世界的ベストセラー『風と共に去りぬ』の舞台としても知られる。1939年に公開されたビビアン・リー主演の映画も大ヒットした。・・・(音読:加藤亜衣子)
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神田明神下のけちな長屋に住む岡っ引き-といえば銭形平次である。四文銭を投げつけ、悪人を成敗する捕物帳シリーズは長短383編に及ぶ。その第1作『金色の処女(おとめ)』で平次が放った記念すべき第1投は、意外なことにピカピカの小判だった。・・・(音読:鈴木春花)
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「人は身体の内でも、外でも、共生と葛藤を繰り返しながら生きている」。作家、上橋菜穂子さんは獣が媒介する謎の感染症との戦いを描いた医療ファンタジー小説『鹿の王』のあとがきに、こう書いている。感染症は根絶できない以上、人的被害を最小化しながら共生するしかないといわれる。・・・(音読:塚本美也子)
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織田信長は人生の節目で梅雨に助けられてきた。桶狭間の戦いでは、豪雨に乗じて今川義元を倒した。長篠の一戦で武田勝頼の軍勢を打ち砕いたのは、梅雨の中休みだった。・・・(音読:加藤亜衣子)
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アルツハイマー病やパーキンソン病など、発見者の名前がついた病気は少なくない。全身の血管に炎症が起こり、主に乳幼児に発生する川崎病もその一つである。もっとも、川崎市の病気との誤解はなかなか解けなかった。「川崎のぜんそくに取り組まれているそうで」。発見者の川崎富作さんは、面識のない医師からこんな手紙を受け取ったことがある。・・・(音読:塚本美也子)
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「プッタネスカ」というイタリア料理がある。アンチョビーやオリーブの実などが入ったトマトソースのスパゲティだ。日本語にすると「娼婦(しょうふ)風」。ナポリの娼婦が客をもてなすために作っていた。日本の感覚ではおふくろの味と名付けたい。料理の名前にもお国柄が出る。・・・(音読:鈴木春花)
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人類は感染症との戦いの歴史を生きてきた。新型コロナウイルスの大流行で改めて思い知る。東アフリカや中東でのバッタ大発生のニュースを聞くと、「バッタとの戦いの歴史」と言い換えたくなる。・・・(音読:加藤亜衣子)
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将棋界における数々の「史上初」の記録や「天才」の称号は、ヒューリック杯棋聖戦五番勝負に挑む藤井聡太七段(17)の専売特許ではない。待ち構える渡辺明棋聖(36)もまた、小学生時代から天才の呼び声が高かった。・・・(音読:峰田雅葉)
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言葉はときに甘い響きを人の胸に残し、ときに残酷な素顔をのぞかせては人を傷つける。「言葉には朝と夜とがある」。作家の寺山修司はこう記し、美しい響きを持つ朝の言葉として「希望」の2文字を賛美した。・・・(音読:鈴木春花)
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日本人が日本の特長を誇ることが、まるで恥ずかしいよくないことのように非難されるのも、戦後の悪弊だろう。麻生太郎財務相は4日の国会で、新型コロナウイルス感染症による死者が、欧米主要国に比べ日本で極端に少ない理由についてこう述べた。「国民の民度が違う」。・・・(音読:塚本美也子)
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「2012年人類滅亡説」を覚えていらっしゃるだろうか。ハリウッド映画の「2012」では、地震や津波が世界各地を襲った。根拠とされたのは、中米で栄えた古代マヤ文明の暦である。マヤでは精密かつ複雑な暦がいくつもつくられた。・・・(音読:峰田雅葉)
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アフリカ東部のルワンダで26年前に起きた大虐殺では、80万人以上が犠牲になった。少数派民族ツチが、多数派民族フツの民兵組織に襲われたのだ。暴力をエスカレートさせたのは、ラジオの放送だった。・・・(音読:加藤亜衣子)
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美術家のクリストさんと妻のジャンヌ・クロードさんは、第7回高松宮殿下記念世界文化賞を彫刻部門で受賞している。ただしその作品はすべて消滅させてきた。・・・(音読:峰田雅葉)
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マーティン・ルーサー・キング牧師は、人種差別の撤廃を訴え続けた米国の黒人公民権運動の指導者である。「私には夢がある」の名セリフでも知られる。・・・(音読:鈴木春花)
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まあ、しゃあんめい。関西弁で言えば、しゃあない。標準語なら仕方がない。日本ダービーを制したコントレイルは、抄子のような「穴党」(高配当の馬券ばかり買って損をし続けている人々)を完黙させた。・・・(音読:塚本美也子)
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天皇の大臣任命式は歴史が古く、『徒然草』の第百一段にも描かれている。・・・(音読:加藤亜衣子)
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透き通った青空というキャンバスに、6筋の長い白線が描かれていく-。29日午後1時過ぎ、ふとフェイスブック(FB)を見ると、多くの人が航空自衛隊のアクロバット飛行チーム「ブルーインパルス」の画像を投稿しており、お祭り状態となっていた。天気同様、気分も晴れやかになった。・・・(音読:鈴木春花)
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父親を殺した少年が警察に追われて、投身自殺を図る。警察は少年を裁判にかけるために、高名な外科医に手術を依頼した。もっとも実際に少年の命を救ったのは、天才外科医、ブラック・ジャックである。・・・(音読:加藤亜衣子)
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JR東日本やJR西日本が民間会社であることに誰も違和感を覚えない。もっとも、旧国鉄が分割・民営化に至るまでの道のりはすさまじいものだった。・・・(音読:塚本美也子)
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香港で中国の民主化支援の野外コンサートが行われたのは、1989年5月27日だった。約30万人がつめかけた。当時、香港を拠点に歌手活動をしていたテレサ・テンは、テレビの生中継を見ていて、いてもたってもいられなくなる。・・・(音読:峰田雅葉)
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女子プロレスラーの木村花さん(22)は、なぜ若い命を散らさなければならなかったのか。インターネット上の一つのコメントに目が留まった。「心が疲労困憊(こんぱい)して、ポキッと折れてしまったのか」。・・・(音読:鈴木春花)
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ページをめくると、微妙な凹凸がある。指先でたどれば、ニャロメやケムンパス、ウナギイヌなど、ギャグ漫画でおなじみのキャラクターの形がわかるようになっている。セリフは点字で意味を読み取る。・・・(音読:加藤亜衣子)
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あるものに関するクイズを一つ。高価なものは金や七色の石でできており、安価なものは1円の値打ちもない。『三国志』では、賊の手に落ちないよう都の女官がこれを抱いて井戸に身を投げ、後に呉の孫堅がこれを拾った。・・・(音読:塚本美也子)
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韓国の慰安婦支援団体といえば、いつの間にか国家的英雄視されるようになった元慰安婦の威光を背に、半ば聖域のように扱われてきた。世論を動かす影響力は大きく、「日韓外交に関して事実上の拒否権を持っている」(韓国外務省高官)ともいわれる厄介で反日的な存在である。・・・(音読:鈴木春花)
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2年前に直木賞候補となった『傍流の記者』(新潮社)は、全国紙の社会部が舞台になっている。いわゆる「夜討ち朝駆け」やスクープ合戦など、記者の実態がリアルに描かれている。著者の本城雅人さんは、小紙とサンケイスポーツで約20年間、記者生活を送っているから当然だった。・・・(音読:塚本美也子)
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<久方のアメリカ人のはじめにしベースボールは見れど飽かぬかも>。作者の正岡子規は、大の野球好きだった。幼名の升(のぼる)にちなみ「野球(のぼーる)」を雅号にしたほどだ。もっとも、ベースボールを野球と訳したのは、子規の後輩で一高ベースボール部員だった中馬庚(かのえ)とされる。・・・(音読:峰田雅葉)
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世界保健機関(WHO)は、1948年に米国と英国の主導により設立された。もっとも、世界的な組織をめざす米国に対して、英国は敗戦国の加盟に慎重だった。冷戦期に入ると、ソ連グループと他の連合国との立場の違いが顕在化する(『人類と病』詫摩佳代(たくま・かよ)著)。・・・(音読:加藤亜衣子)
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